
<思い出のジェノベーゼ>
隣町に住むアーティストのK氏 が自身のポートレートのため、Anchovy Studio を訪れた。
撮影が済んだら、遅めのランチだ。ボクは到底待てないので、さっさと先に食べて満腹である。
本日のランチメニューは、スパゲティジェノベーゼ&アップルサラダ。
ダディは撮影前に、庭からバジルの葉をたくさん採って来てソースを作っておいた。
実は、ふたりがロンドンに住んでいた頃、ボクがまだ生まれる前のこと、イタリア人の友達のお母さんが作ってくれたジェノベーゼの美味しさが衝撃的で、ダディは何度か自分でも作っているのだ。キッチントップに置かれた採りたてのバジルの束とその香り。テーブルに運ばれたパスタはグリーンに染まり、その美しさとまろやかな味が忘れられず、ダディは再現できる日を今日も夢見ている。
<悪夢のフォトセッション>
実はこれでおしまいではなかった。ボクにとって、世にも恐ろしい大事件が起きたのだ。またまた実は、彼らは空腹のため、撮影の前に先にランチにしてしまったのがいけなかった、とボクは思う。それは、昼食後のことだった。
K氏がいったんスタジオを出たと思ったら、何と「犬」を連れて戻ってきたのだ。
驚いたの何のって、心臓が止まる寸前にボクはピューマのごとく階段を駆け上がり、マミーのベッドの下に。そこに置いてあるキティーの時から愛用している小さなベッドに丸くまり、耳を研ぎすましたが、膨張した尻尾がはみ出て隠せない。
聞こえて来るのは、うなり声か、うめき声か。ああ、もう心臓がバクバクだ。
階段を上がってくるマミーの足音、開けっ放しのドアを閉めたぞ。「ピッピー、ピッピー」とボクを探している。ああ、助かった。
どうやら、ジェノベーゼを味わいながら、K氏は「愛犬と一緒にポートレートを撮ったら素敵かなあ」と、ボクにとっては、とんでもないことを言いだしたらしい。この悪夢のフォトセッションはいつ終わるのだろうか。ボクは奥にあるマミーの書斎の机の上で、聴覚2万%でじっと待っていた。



ようやく、“OK!” と言うダディの声が聞こえてきた。
マミーを横目で見ると、小悪魔のように微笑んでいた。
一家に一台ほしいダディ様
返信削除我が家の庭にもバジルが・・・・美味しいバジルソースを作ってください!と言いたいところですが、そこまでは要求いたしませんので、ぜひレシピを教えてください。
ダディに聞いておきますね。でも、ウチにはフードプロセッサーがないので、すり鉢とすりこぎでバジルの葉をゴリゴリやっていますよ。
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