
「ただいま〜」
ダディの声がした。しばらくすると、何やら階下が騒がしい。それに温かい空気が上がってきた。下を見下ろしてみると、やはり、蒔ストーブが燃えている。あっ、外は雪だ。いつの間にか、うたた寝をしてしまったようだ。
「雪が降ってきたよ」
「わあ、舞ってるわ。今日は寒いから夕方ストーブをつけると思ってね。焼き芋を作ろうかなと思って、買って来たのよ、サツマイモ!」
「それはいいね」
「もう入れてもいい?」
「まだダメ。火が落ち着いてからだよ」
ボクはゆっくりと階段を下り、ダディの膝の上にヒョイと座った。そして、お芋が焼けるのを待った。食べたいわけではないのだが。
ストーブを開け、ダディがアルミフォイルの包みを取り出した。ああ、いい匂いがしてきたぞ。でも、ボクがお芋に興味がないのを知っているのか、お裾分けの素振りもなく、ボクを完全無視で、「ふーふー」と、ふたりは焼きたてのホカホカを食べ始めた。そんなふたりをボクはただじっと眺めていた。
しばらくすると、電話がなり、
「これから、‘ひなの’が来るって。ジュン、覚えてる? ウチの田舎の子。今、東京に出て来てるんだって。お兄ちゃんが連れてくるってさ。泊まっていくかも」
さあ、また賑やかになるぞ。ホカホカの焼き芋、もっと作るのかなあ? 女の子は焼き芋が好きだからね。
「ひなの、もう大学生かあ」ダディが呟いた。
なあんだ、ああ、良かった! ボクはちびっ子が苦手だから。泊まっていってもいいですよ、ひなのさん!
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